企業には法定雇用率というものがあり、社員が一定の人数を超えた企業は障害者を雇用をする義務があります。
しかし、法定雇用率に沿って何十人も雇用をしなくてはならない企業は、受け入れ態勢を整えることが難しくなります。
そんな問題を解消するために出来たのが「雇用代行ビジネス」です。
しかしこの雇用代行ビジネスに関して否定的な意見も多く、国会でも問題視しているという報道も出ています。
ちなみに私は反対派ですが、考える部分もありますので私の意見は最後にまとめたいと思います。
今回はこの雇用代行ビジネスの何が問題なのか、今後どうなるのか私の予想も含め解説していきます。
障害者雇用代行ビジネスとは
最近のこのようなニュースが上がりました。
「雇用代行」という聞きなれない言葉と障害者雇用の制度をよく知らない方にとっては
よくわからないで終わってしまう内容ですが、働く方や雇用を考える企業にはよく知ってほしいニュースです。
この代行ビジネスを説明するためにはまず、法定雇用率とは何かを知る必要があります。
ご存じの方は次の項目からお読みください。
法定雇用率制度の概要
法定雇用率制度とは43.5名以上従業員を雇用している企業は、障害を持っている方を法定雇用率以上雇用する必要があるという制度です。現在の法定雇用率は2.3%と定められています。
つまり100名従業員がいる企業では2人以上障害のある人を雇用する必要があるということです。
法定雇用率を満たせていない場合、1名につき月額5万円を納付金として国に支払う必要があります。
法定雇用率は何人から適応されるのか、人数の計算方法などの詳細についてはこちらから↓↓
大企業になればなるほど受け入れ人数が増えてきます。
仮に従業員が1,000名いる企業では23名以上雇用する必要がありますが、23名の受け入れ体制を整える事は決して容易なことではありません。
しかし受け入れをしないと毎月23名×5万円=115万円の納付金を払う必要が出てきます。
その他にもさまざまな理由から障害者雇用に手を出せない企業は多数おり、こうした悩みに対して出来たサービスが「雇用代行ビジネス」です
雇用代行ビジネス
雇用代行ビジネスは企業で採用した方を代行会社へ派遣し仕事をしてもらうという仕組みです。
代行を利用した働き方の一例として下の図を参考にしてください。
雇用契約はA社と交わしていますが、実際に働くのはB社なので受け入れ体制を整える必要もなく、法定雇用率を満たすことが出来るということです。
こうした代行ビジネスは全国に十数社程度あり、その多くは雇用契約を交わした企業と関係のない農作業の仕事をすることになります。
現在A社のように代行を利用している会社は800社、実際に働いている障害者の人数は5,000名程と言われています。
ここまで多くの企業が活用している雇用代行ビジネスですが、活用する事でどんなメリットがあるのでしょうか
雇用代行ビジネスを活用するメリット
これには企業側のメリットと働き手にも該当するメリットがあります。
企業側のメリット
法定雇用率を満たす事が出来る
先ほども述べましたが、利用企業と雇用契約を結んでいるため、利用企業の法定雇用率を満たすことが出来ます。
受け入れ体制の準備が最小限で済む
代行会社で勤務をするため、障害者の受け入れに必要だった設備の購入や事前準備をすることなく、最小限のコストで雇用が出来ることになります。
働き手にも該当するメリット
求人の創出が出来る
企業が障害者雇用のために求人を作る際、業種や職種によってはレベルが高い仕事しか切り出せないこともあります。そうなるとレベルが高い仕事だと特性的に働くことが困難な方も出てきます。
そのため、比較的働きやすい農作業という仕事であるがゆえに働く事が出来る方が増えるのです。
環境が整った状態で働ける
この農園のほとんどが障害をお持ちの方です。そのため農園のスタッフさんは障害への理解の高い方が対応しており、安心して仕事をすることが出来るのです。
このように企業、働き手双方にメリットがある働き方のように思えますが、なにが問題なのでしょうか
雇用代行ビジネスの問題点
問題であると言われている要因は
「法定雇用率のためだけに利用している」、「障害者雇用をしたくない企業がやっている」などのマイナスのイメージが原因となっています。
イメージが下がってしまった原因
障害者雇用は「障害者雇用促進法」という法律を基準に組み立てられている制度です。
この法律は、「障害という事を理由に一般企業で働く機会を失わない事、また能力を発揮出来る事」を目的としています。
つまり雇用契約を結んだ会社で貢献をする事が望ましいという考えです。
しかし代行ビジネスを活用することで、「コストを掛ける事を惜しんでいる」、「イメージアップを図っているのではないか」、「自社で働かない事で雇用の質が低くなっている」と言った意見が出ているのです。
つまり、周囲からは法定雇用率を達成するためだけの障害者排除に見えているということです。
そのため、雇用した企業対応するべきであるといった声が出てきているのです。
批判に対しての反対の意見
こうした批判に対して反対の意見もあります。
「定期訪問や日報などの提出をしているため代行ではない」といった意見や雇用が生まれにくい会社が利用することで雇用が生まれていることに関して肯定的な声も上がっています。
まとめると現実的な問題として、貢献出来ている側面がある一方、自社での労働ではない事に対しマイナスなイメージがあることが問題とされている要因になっています。
今後どうなるのか
この問題に関しては国会でも、議論の対象になっている問題です。厚生労働省としても、令和5年3月には具体策を提示する考えを示しています。
私が想定する動きとは、注意喚起の強化と制限です。
ただし、このサービス自体は制限が強まるが無くならないではと考えられます。
予想1 注意喚起の強化
これまでも、厚生労働省から企業に対し利用を控えるように注意喚起が行われてきました。
これに関してはこれまで以上に、大々的に注意喚起を行うことが考えられます。
予想2 利用に関しての制限
約5,000名働いている方がいる以上、強制力のあるような指導や廃止などは考えにくいです。
しかし行政などは肯定的ではない事を考えると、何らかの制限をするるような指導があるのではないかと考えられます。
そうなると、利用をしていた又は検討していた企業は、自社で受け入れ態勢を整えるような仕組みを作る必要が出てきます。
予想3 何らかの形で共存する可能性
一方では実際に働く場所がないため、こうした働き方を望んでいる方もいます。
そうした声に対しては、雇用の質が高まるような仕組みとして残るのでないかとも考えます。
いずれにしても4月を目途に、何らかの動きがあることは間違いありません。
今後の対策としてコンサルタントなどを活用する動きも想定されます。
最後に私が行っているコンサルについてご紹介させていただきます。
企業向け障害者雇用コンサルタント
私が行っているのは、障害者雇用の企業支援です。
求人の切り出しから求人作成、在職中のスタッフのジョブコーチ支援など障害者雇用という制度を知ってもらうことから定着までをワンストップで行っております。
そのため、障害者雇用を初めてする企業、障害者雇用に何らかのお悩みを抱えている企業を対象に
企業の方向性に合わせた雇用の方法をご提案いたします。
さらに面接に同席をしてアドバイス、助成金の申請サポートや代行など、
企業向けに障害者雇用のハードルを下げるお手伝いをさせていただきます。
契約方法はスポット、顧問両方に対応しております。
企業向けの障害者雇用コンサルタントをぜひご検討下さい。
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まとめ
今回は、障害者雇用の代行ビジネスについてまとめました。
私個人の意見としては、代行に関しては反対です。
私は障害者雇用という制度が無くても、誰でも働きやすい環境をどの企業も作れることが理想であると考えてますが、これは自社で受け入れを行うことが前提です。
この考えとは違う雇用の創出であるため反対です。
しかし現実問題として雇用を作り出すことは容易ではありません。
雇用をしなかったであろう企業が利用し、雇用の機会があることを考えると雇用の創出には繋がっている側面も事実です。
理想はこのビジネスに制限を掛けるよりも、雇用を作り出しやすくなるような企業支援が先に必要になるのではないでしょうか。
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