近年よく聞く【大人の発達障がい】。芸能人やインフルエンサーなどでも公表する人が増えてきて、注目されることも増えてきた発達障がい。しかし実際当事者は悩んでいてもなかなか周囲に相談できない方も多いです。
なので周囲がより理解をしたうえでサポートをする必要があります。少しでも働きやすい環境を作るために、今回は雇用アドバイザーの視点で発達障がいの特性や一般的に特性に合う仕事をまとめていきます。
企業で発達障がいをお持ちの方の雇用を考えている企業はぜひ参考にしてみてください。
- 発達障がいは性格や個性に近いものである。
- 発達障がいはADHD、ADL、LD、チックの4つに分けられる。
- 同じ病名でも特性が異なることが多い。
- 配慮の考え方としては人的環境、物理的な環境を整える必要がある。
発達障がいとは
発達障がいは、脳の機能の発達が原因で起こるものです。
気持ちのコントロールが苦手だったり、人との関わりをうまく作れない、記憶や学習に遅れが出てくるなどの特性が日常生活に支障をきたす状態を言います。
また発達障がいの考え方としては性格や個性に近いものであるため、
症状という言い方はせず、性質などを意味する「特性」という言い方をする事が多いです。
手帳の種類
発達障がいの方の手帳というものはありません。そのため精神保健福祉手帳、もしくは療育(愛の)手帳を所持することになります。
明確な区分はありませんが、
知的に遅れがある方は療育(愛の)手帳
知的に遅れが見られない方は精神保健福祉手帳
を発行されることになります。
発達障がいを公表している有名人
最近では有名人でも発達障がいを公表する方が多くなってきました。
- 米津玄師さん(ASD)
- イーロンマスク(ASD)
- SEKAI NO OWARI 深瀬さん(ADHD)
- 真鍋かをりさん(ADHD)
- トムクルーズさん(LD)
- ミッツマングローブさん(LD)
など・・・
こういった有名な方々が公表することで、少しずつ発達障がいというものにスポットが当たるようになってきたのです。
またスポットが当たることで「大人の発達障がい」という言葉も良く耳にするようになりました。
大人の発達障がい
大人の発達障がいとは
大人になってから発達障がいになったのではなく、大人になってから発達障がいに気づいたという事です。
発達障がいの特性が少ないもしくは見えずらいがために、本人も周りも気が付かない事も多々あります。
学生時代は忘れっぽいことや落ち着きがないことはそんなに気にならなかったけど就職後に上司などから多くの注意や指摘を受けることで気が付くといったケースが多いです。
そのため皆さんの周囲にいる方でも、ミスが多いことや物忘れが特別多い方は、発達障がいの可能性もありますので、少しやり方や伝え方を変えてみてもいいかもしれませんね。
さてここまでは発達障がいの概要を解説をしてきましたが
ここからは特性について解説をしていきたいと思います。
発達障がいの特性
発達障がいの病名と特性、特性に合わせた会社が出来る対策方法も含めて解説していきます。
また今回は各特性に合った職種なども紹介していきますので、求人を出すときや仕事を任せる際の参考にしてみてください。
自閉症スペクトラム障害(ASD)
特徴としては対人関係が苦手で強いこだわりを持つ事が大きな特徴です。
女性より男性に多くみられる傾向があります。
- 相手の表情を見て察する事が苦手
- いわゆる空気を読む事が難しい
- 冗談が理解できない
- 決まった行動をしないと落ち着かない
- 臨機応変に行動を変える事が出来ない
- 特定の物に興味があり執着していまう
- 見通しが持てないと不安になる
- 優先順位がつけられない
他にも聴覚や視覚などの感覚が過敏になり、集中が出来なくなる方もいらっしゃいます。
企業の配慮
ASDの方は信頼関係が出来ていない段階ではコミュニケーションをとることが苦手です。
そのため対策法としては・・・
- 報連相の相手を特定の方に限定する
- 1日や1週間単位での予定を設定しておく
特に臨機応変な対応が苦手なことが多いので、予定の変更があれば早めにお伝えすることが良いでしょう。
おすすめの職種例
ルーチン作業などの決まった動きが得意なため下記のような作業をお任せすると力を発揮できます。
工場や倉庫などの仕分け作業(ピッキング)や製造作業

一人で黙々と出来る仕事が多いので慣れれば
苦手なコミュニケーションも少なく一定の決められた動きの作業は集中して対応が出来ます。
事務補助

体力に自信がない方は事務補助などがおすすめです。
電話応対や来客応対も少なく、書類整理や入力業務などのルーチンの業務を中心にお任せするとよいでしょう。
おすすめしづらい職種
一般事務職

作業中に電話がなったら対応するなど、臨機応変に優先順位を自分で考える必要があるため
苦手な場合も多いです。
サービス業

事務職と同様の理由です。広くサービスとしましたが、介護職などの接客など仕事をイメージしています。
注意欠如・多動性障害(ADHD)
名前の通りに大きく注意欠如と多動性2つの症状に分けられます。
- 注意欠如・・・
- 集中の持続が出来ずケアレスミスをする
- マルチタスクが苦手
- 約束や予定なども忘れてしまうことがある
- 整理整頓が苦手
- コツコツ続けることが苦手
- 多動性・・・
- 落ち着きがなくじっとしている事が苦手
- 順番を待つことが出来ない
- 人と話す時に一方的に話をしてしまう事
- 衝動的に思ったことを行動する
- 人の話を遮る
この2つの特性はどちらかの場合もあれば、両方の特性を持っている場合もあります。
こうしたことで注意や指摘を受けすぎると、うつなど精神的な症状を引き起こす原因になる場合も。
会社の配慮
注意欠如について
失敗やミスに関してはある程度の注意、指摘は必要だと考えます。そのうえでミスが出ない仕組み作る必要があります。
多動性について
ASDの特性とは対照的でじっとしている作業は苦手なため、多少動きのある作業をお任せするなど仕事の環境に配慮する必要すると力を発揮できます。
おすすめの職種例
クリエイティブな作業や比較的に対人スキルに優れている方も多いため、下記のような職種がおすすめです。
・プログラマーやイラストレーター等

比較的にクリエイティブな業務が得意な方が多いため上記のような仕事で働かれる方が多いです
相談員さんや保育士等の対人援助職

コミュニケーションは好きという方も多く、対人関係の専門職で働かれている方もいらっしゃいます。
おすすめしづらい仕事
同じ作業を続けることや同時に平行して作業を進めることが苦手なため、下記のような作業は合わない可能性が高いです。
工場や倉庫などのルーチン業務

同じ作業を続ける事と集中する事が仕事になるので職場体験などで合わないと言われる方が多数いました。
マルチタスク業務(総合職)

並行して物事をすすめる事が苦手な方が多いためマルチタスクを必要とする仕事はあまりおすすめできません。
学習障がい(LD)
知的な遅れは無いものの限定的に特定の学習が苦手な症状です。
知的障がいとの違いは特定の物以外は学習に問題が無いことです。
読字障がい(読むことが苦手)、書字障がい(書くことが苦手)、算数障がい(計算が苦手)の
大きく3つに分けられます。
- 読字障がい(読むことが苦手)・・・
- 漢字が読めない
- 似たような字(わとねのような)の理解が出来ない
- どこを読んでいるか分からなくなる
- 書字障がい(書くことが苦手)・・・
- 漢字が覚えられず雰囲気で文字を書く事がある
- 字を書き写す事が出来ない
- 誤字脱字が多い
- 算数障がい(計算が苦手)・・・
- 数字や記号が分からない
- 数の大きい小さいが分からない
- 文章問題や図形やグラフの理解が出来ない
会社の配慮
苦手なことを解消できることで問題なく働けることが多いです。
例としては
・漢字にはルビをふる
・文字を使わず画像や動画を中心にマニュアルをつくる
・口頭やジェスチャーを使って何度も説明する
など苦手を解消するように対処します。
おすすめの職種例
比較的に文字に関して苦手を感じる方が多いため、字の読み書きが少ない職種だと働きやすいです。
調理、清掃、洗車

マニュアルが写真になっている現場や口頭での指示が多いため、比較的に働きやすいです。
検査業務

こちらも同様に写真や見本などと見比べることも多いため、働きやすいです。
おすすめしづらい仕事
・事務職

読み書きや計算が少なからず、出てくる事がありますので、配慮する必要があります。
チック症
急に出てくる「癖」のような行動が特徴で、自分の意思で止める事が難しく突然出てくるため、日常生活においても支障が出てくることがあります。
- 顔をしかめる
- 肩すくめる
- まばたきをする
- ジャンプをする
- 物をたたく
- 声をだす
- 咳払いをする
- 他人がいった事を繰り返す
比較的動作が激しいこともあり、周囲の目を気にされている方も多いです。
仕事について
チック症だからこれが良いという仕事はなく、癖のような特性以外は問題なく作業ができます。
ですが人前に出る事が苦手なことや物を叩いてしまう特性の場合は
サービス系の職種や壊れやすい精密機械の製造などは特性に応じて配慮する必要があります。
発達障がいの仕事の割り振り方
基本的に、仕事に合わせて人材を考えるよりは、人や特性に合わせて仕事を考えることが重要です。
発達障がいは苦手にスポットライトが当たることが多いですが、
自分の得意な事や好きな事にはめっぽう強い方が多いため、周りの理解を得て環境を変えていく事で力を発揮します。
そのため特性に応じた、人的環境、物理的環境を整えることで戦力となる人材として、貢献が出来るようになります。
発達障がいへの配慮の考え方
自分の得意な仕事を過ごしやすい環境の中でする事で力が発揮出来ることは障がいの有無にかかわる話ではありません。
ですが、いわゆる健常者と言われる方々と比べると、発達障がいの方はより環境には敏感で繊細でなのです。
こうした環境を作るといった話にはコストが付きまとうのですが、正直、工夫次第で最小限にコストを抑えることが出来ます。
最後に会社が配慮をするにあたっての考え方を3つお伝えします。
特性を把握する事
まずは、相手の得意なこと、苦手なことを理解することから始めていきましょう。
これは人的環境を整えることなります。
すでに働いている人とは面談をする、これから採用するのであれば面接で確認することが必要です。
また働いている中で、本人や周囲が気が付いていない特性も発見することもあります。
出来る限り相手の事を理解する、人的環境を整えることが重要です。
具体的な対処法を考える事
相手の特性に合った対処方法を考えてみましょう
これは物理的な環境を整えることにあたります。
- 整理整頓ができない→置く場所を最初に決めておく
- 見通しが持てないと不安→ 一日のスケジュールを前日に立てておく
- ケアレスミスが多い→指さし確認を行う
- 口頭での指示だと動けない→マニュアルを作成する
など
相手に合わせてた対処法を探していくことも重要です。
より具体的な対策を立てることでより、働きやすくなります。
相談する機関を見つける事
会社内だけで対応を考えてしまうと答えが出ない事やどこまで介入ていいものなのかわからなくなり、結果として社員の負担が大きくなってしまいます。
そのため会社担当者が負担を減らすため相談機関を見つけることが重要です。
こうしたサポートがあるだけで、会社としての人的負荷に関してはかなり軽減するためより障がい者雇用のハードルが低くなります。
企業向けに、障がい者雇用アドバイザーとしてサポート事業を始めました。
求人の切り出しから助成金の申請、ジョブコーチ支援までワンストップのサポートをしています。
もちろん、スポット的なサポートも可能です。
特に障がい者雇用で生じる問題は特性、会社によって変わってきます。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
まとめ
- 発達障がいは性格や個性に近いため、周囲が理解する姿勢が必要になる
- 発達障がいはADHD、ADL、LD、チックの4つに分けられ、特性に応じた配慮が必要である
- 同じ病名でも特性が異なることが多いため、対象者の特性を見つけていくことが重要。
- 配慮の考え方としては人的環境、物理的な環境を整える必要がある。
ただし会社だけで解決をすることが難しいこともあるため、相談する場所を探すことが必要
発達障がいは障がいの中でも判断に難しく、見た目や少しの関わりでは理解が難しく、悩んでいる当事者の方が多いことも事実です。
もちろん障がいに気が付かずに悩んでいる方もいます。
この記事で伝えた配慮の考え方は健常者も含めた方に有効な手段ですので何かの参考になれば幸いです。
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