障害者雇用において「合理的配慮」は、働く上でもっとも重要な要素になります。
特に令和6年度からは、合理的配慮の義務が開始となり、障害分野において注目をされていることの一つです。
しかし、合理的配慮の実態は非常に曖昧で、法律としても内容が決まっているわけではなく、本人と企業が話し合って決めるというものです。
その曖昧さが原因で「わがまま」と言われがちですが、配慮自体はわがままではありません。しかし伝え方は重要です。
今回は仕事を探している方や働いている方向けに、合理的配慮の考え方や伝え方を中心にお伝えしていきます。
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合理的配慮はわがままなのか
【結論】合理的配慮はわがままではない
結論からお伝えすると
「配慮はわがままではなく、権利です。ただし求めすぎてはいけません」です。
その根拠として法律で定められています。
合理的配慮は法律で定められている
「合理的配慮」とは、障害をお持ちの方に「仕事ができる」または「仕事しやすいように会社がサポートする」ことを言います。
これは「障害者差別解消法」という法律として定められており、令和6年度に改定された条文では
第8条
事業者は、その事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。
と定められていますが、小難しいく書かれていますので要約すると
という内容が書かれています。
これまでの法律では、行政や地方公共団体などは義務、企業は努力義務とされていますが、令和6年度からは企業も義務化となっています。
合理的配慮の具体的な内容企業と話し合って決める
合理的配慮は具体的に内容が決められているのではなく、個人の障害に対して配慮内容を検討します。
たとえば視覚障害の方でも
「目が見えにくい」、「全く見えない」、「色が分からない」など人によって症状が違います。
障害の状況や希望によって異なるため、会社側と相談して具体的な内容を定めることになります。
ただし、企業は全ての要望に答えられる訳ではありません。
「コストが掛かる」「人手が足りない」といった会社に負担が掛かりすぎる希望に関しては、受け入れることが出来ないこともあります。
そのため企業と相談して配慮内容を検討することになります。
合理的配慮の具体例
実際にどんな事例があったのか、いくつか私が経験した事例を元に解説していきます。
ご自身の参考にしてみてください。
1.仕事の設備に関しての配慮
身体障害の方で車椅子にて生活をしていたAさんだが、会社に入る際に3段程度の階段があったため応募を悩んでいた。しかし企業からスロープの設置を提案され入社することができた。
この時は、仕事の前にまず会社に入ることが出来ませんでした。そのため、会社に入れるようにスロープを設定することが配慮になっています。
2.コミュニケーションに対しての配慮
自らコミュニケーションを取ることが苦手なBさん。多くの社員が働く会社に入社しましたが、近くの方に質問や相談がすることができなかった。そのため担当者を1名決めてその方に報告や相談をするように決めた。
多数の方と話をすることが苦手だったので、一人の方を決めることで報連相が出来ていました。またシフト制だったので担当者に合わせた出勤にしてもらっていました。
3.勤務時間に関する配慮
A型事業所から就職したCさんは、最初からフルタイムで働くことに不安があった。そのため、最初はA型事業所と同じ時間で働くことにして、慣れてきたら時間を伸ばすことにした。
求人がフルタイムであっても、最初から8時間働くことに不安がありました、しかし6時間から徐々に増やすことで今は8時間働くことができています。
この通り配慮は働く上でかなり重要な要素になります。
何故わがままといわれてしまうのか
このわがままという意見が出る要因は、主に2つです。
- 企業が障害を理解出来ていない
- 会社に配慮を求めすぎている
どういうことかもう少し詳しくお伝えします。
企業が障害を理解していない
「わがままだ」と声を挙げる方は「同じ職場の同僚・上司」や「人事担当者」と言った方々が多いのでしょうか。
共通することは、障害を理解していないということです。
特に、精神障害、知的障害、発達障害、脳機能障害といった目で見て分かりにくい障害は、周囲に伝わりにくい障害と言われています。
企業の方々は、障害の専門家ではありませんから、当事者と企業との間で理解の差が生まれてしまうのです。
そのため会社の人は障害のことを知らないつもりで、症状や状態を詳しく伝えることが重要です。
会社に配慮を求めすぎている
配慮を求めすぎてしまうと、会社側からはわがままであると言われてしまいます。
求めすぎるとはどういうことか、もう少し解説をしましょう。
求めすぎる配慮の例題
下記のような条件の求人があるとします。
Aさんが応募する際に、下記のような配慮を求めました。
これをすべて満たす条件になると
仕事も一つの作業だけになり、障害者雇用としての枠も満たせません。また髪の色やヘットフォンなどビジネスマナーとしても気になる部分があります。
これでは企業も雇用するメリットがありませんし、わがままと言われてしまう要因になります。
もし修正するのであれば、下記のような希望であればまだ相談可能かもしれません。
配慮を会社と相談するためには、伝え方や求める内容が重要なのです。
合理的配慮の伝え方
ではここからはどのように伝えるのが良いのかまとめていきましょう。
企業に伝える際のポイントとして3つ挙げています。
なぜその配慮が必要なのか具体的に伝える
先程もお伝えした通り、企業は障害の症状や特性を詳しく知っている訳ではありません。
まずは自身の障害の状況を詳しく伝えた上で、その症状に沿って配慮の希望を伝えることで、企業も分かりやすくなり説得力に繋がります。
要望だけでなく自分に何ができるのか合わせて伝える
合理的配慮は努力義務とされていますが、与えられた仕事をすることが前提です。
そのため、要望をするだけでは相手も納得できません。
「配慮をしてもらえればこんなことをがんばります」といった「自分の長所」や「得意なこと」または「決意表明」でも構いません。相手にとって雇用するメリットも忘れずに伝えましょう。
企業の考えもしっかり聞く
配慮の相談は交渉です。そのためこちらの意見だけでなく、企業の状況も考える必要があります。
まずは企業側の出来ないこともしっかり聞きましょう。そのうえでどこまでの配慮ができるのか良く話し合って内容を決めていきます。
ポイントを理解したうえで企業と話しをすることで評価も良くなり、必要な配慮ももらえます。
おすすめの配慮6選
具体的に配慮内容が思いつかないという方に、おすすめの配慮項目を6つ紹介します。
ご自身で必要な項目を伝えてみましょう。
定期面談
自分の評価が気になる方や自分から相談することが苦手な方におすすめです。
週1~月1回程度上司や人事担当との、面談を設定をしてもらいましょう。
自分から相談することが苦手でもタイミングがあることで、相談しやすくなります。また会社から評価や課題を伝えてもらうことで、モチベーションのアップや課題の修正ができるようになります。
通院
定期受診が必要な方におすすめです。
早退やお休みなどで対応ができないか相談してみましょう。
週20時間以下の勤務体制では相談も難しいため、勤務時間外で通院するようにしましょう。
マニュアルを作成させてもらう
特に事務系の方におすすめです。
作業マニュアルが最初からあれば、より作業が覚えやすいです。しかし業務や会社によってはマニュアルがない場合もあります。
そんなときは、マニュアルを自分で作成する時間をもらうことをおすすめしています。自分なりに分かるようにまとめられるので習得が早くなります。
しかし作成の時間が取れないこともあるため、交渉としては難易度が高いかもしれません。
特定の担当者を付けること
名前を覚えるのが苦手、コミュニケーションが苦手な方におすすめです。
報告や相談など誰にするのかを明確にしてもらうことで、相手に迷うことなく報連相ができることで安心して仕事に取り組めます。
時短勤務からフルタイム以降
フルタイムで働くことが不安な方におすすめです。
最初からフルタイムに不安な方は6時間程度からスタートを相談してもいいでしょう。慣れてきたら7時間、8時間と増やすなど検討をしていきます。
ただし、週20時間の以下だと障害者雇用という枠から離れてしまうため、注意しましょう。
指示は文章で出してもらう
口頭での指示が分かりにくい方、メモを取ることが苦手な方におすすめです。
指示などのやり取りを文章として伝えられることで、指示がより分かりやすくなります。
もちろん自分でメモを取れることが重要ですが、メモが苦手な方は最初から文章にしてもらう方が指示が分かりやすいです。
まとめ
配慮が嫌な方は障害があることを隠して働く方法もあります。
しかし、働くことは生活の1部であり、プライベートの時間よりも長いです。
無理して働くよりか配慮があって7割の力で長く働ける方が、体にも心にも負担が少ないです。
ぜひ参考にしてみてください。
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