障害ある方の働く機会を作るために出来た制度が障害者雇用ですが、この制度を活用するにあたっていくつかハードルがあります。
そのハードルの一つに「労働時間の縛り」があり、これまでもかなり話題になっていた問題のひとつです。
この労働時間の縛りがあることで、雇用率を達成出来る状態の企業からすると雇用をしているのに認められないためもどかしい状況だと思います。
そこで労働政策審議会分科会で「超短時間の働き方」について議論となっており、令和6年4月から施行開始となります。。
この超短時間の働き方は企業だけでなく、労働する側も望んでいるものになります。
そこで今回は「どんな改定になりそう」か現状の情報を基に見ていき関心を持つきっかけになればうれしいです。
- 現在は週20時間以上働かないと障害者雇用として認められない。
- 週10~20時間未満でも法定雇用率にカウントする議論をしている。
- 労働者のメリットも大きいが、企業にもメリットはある。
それでは行きましょう
現在の障害者雇用の条件
まず現の障害者雇用の条件をまとめていきましょう。
現在の障害者雇用の条件
障害者雇用と認められるには2つの条件を満たす必要があります。
- 療育(愛の)手帳、精神福祉手帳、身体障害者手帳のいずれを所持していること
- 週20時間以上の勤務をしていること
どちらかが満たせていない場合、障害者雇用のカウントには入れることが出来ません。
このカウント方法についても確認してみましょう。
法定雇用率に対してのカウント方法
企業は法定雇用率を加味した上で、採用人数を決定をしていくものだと思います。
従業員が45.5人以上雇用している企業は、全体の雇用人数に対して障害のある方を2.3%雇用をすると定められている法律です。
つまり100人雇用をしている企業の場合、2ポイント以上障害のある方を雇用する必要があるのです。(端数は切り捨て)
法定雇用率は人数ではなく労働時間と障害者の種類でカウント方法が変わります。
下記の表にまとめました。

つまり
100人常用雇用している企業の場合、端数は切り捨てになるため、
30時間以上の働く方であれば2名以上の採用、重度と判定されている方は1名以上の採用で雇用率を満たすことが出来ます。
ここまでが現状の障害者雇用の規定となります。
ではこの法律がどう変わるの可能性があるのか見ていきましょう。
改定となった場合の障害者雇用
変更になると言われているのは条件のこの部分です。
- 療育手帳、精神福祉手帳、身体障害者手帳のいずれを所持していること
- 週20時間以上の勤務をしていること
今回議論となっているのは、週10~20時間の働き方でも障害者雇用として認めるということです。
精神障害、重度身体、知的障害の方に対しても週10~20時間未満でも0.5のカウントにすることが出来るというものになります。
この週10~20時間の働き方をここでは「超短時間」として話を進めていきます。
実際この条件に変更となれば、働く側のメリットは非常に大きいです。
これまでは就労継続支援事業所A型、B型などの福祉サービスしか検討出来ない方でも一般企業で働ける機会が増えることになります。
では企業とってはどんな変化が想定出来るでしょうか。
「超短時間」が認められた際のメリット、デメリット
この「超短時間」が認められたと仮定した場合のメリットとデメリットをまとめていきましょう。
企業のメリット
- 現在雇用している方が20時間未満でもカウントに入れられる
- 仕事の切り出しに関しての負担が減る
- 応募者の増える可能性
現在雇用している方が20時間未満でもカウントに入れられる
現在体調不良などを理由に10〜20時間未満で働いている方がいる場合、これまでであればカウントに入らないケースでも10時間働いてれば0.5カウントに入れることが出来ます。
そのため、今後の採用計画にも影響してくる可能性も高くなります。
仕事の切り出しに関しての負担が減る
これまでは、一から障害者雇用を検討する際、最低週20時間分の仕事を切り出す必要がありました。しかしとりあえず10時間分の仕事を切り出すことが出来れば、求人を出すことが可能になります。
これは障害者雇用をしたことがない企業からすると、短時間の求人から提示が出来るため試験的に導入しやすくなります。
応募者の増える可能性
特に精神障害の方は安定した出勤に対し不安感を抱えている方が多いです。しかし1日2時間であれば働けるといった方もいるため応募は増える可能性もあります。
こうしたメリットがある反面デメリットもあります。
企業のデメリット
- 特例給付金がなくなる
- 採用不採用の判定が難しい
- 現場の従業員の負担が増える可能性
特例給付金がなくなる
これまでも、障害者雇用のカウントは出来ませんが、条件付きで「超短時間」で労働すること自体は可能でした。
そして受け入れをした企業には「特例給付金」という助成金の支給もあったのですが、仮に今回の「超短時間」が通れば特例給付金は廃止となります。
しかし、1人あたり1月5〜7,000円程度のため活用しにくい助成金だったことも否めない助成金ですね。
採用不採用の判定が難しい
より不安定な方や重度の方の応募が増える可能性が高くなるため、実際に働けるのかこれまで以上に見極める必要があります。
現場の従業員の負担が増える可能性
重度の方の採用となるため、短時間ではあるが、実際に指導をする現場の従業員からすると負担が増える可能性があります。
また短時間であるからこそ、業務内容を覚えにくいということも出てくるだめ教育体制を作る必要が出てきます。
雇用の機会を増やすことに繋がりますが、これまで以上に体制を整える必要が出てきます。
企業向けに、障がい者雇用アドバイザーとしてサポートをしております。
求人の切り出しから助成金の申請、ジョブコーチ支援までワンストップのサポートをしています。
もちろん、スポット的なサポートも可能です。
特に障がい者雇用で生じる問題は特性、会社によって変わってきます。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
まとめ
- 障害のある方に対して新しい働き方が増えるかもしれない
- 現在は週20時間以上働かないと障害者雇用として認められないが週10~20時間未満でも法定雇用率にカウントする議論をしている。
- 労働者のメリットも大きいが、企業にもメリットはある。
- デメリットも大きいためこれまで以上に体制を整える必要がある。
今回は超短時間の働き方についてまとめました。
令和6年から施行開始となりこれから、より注目される障害者雇用です。
しっかり備えていく必要のある話題のため、障害者雇用の人事に関わる方は注目して動向を見ていきましょう。
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